July 08, 2010

一級建築士

一級建築士の事務所を訪問した。

エレベーターの無い雑居ビルの4階まで上がると、鼠色の鉄の扉があった。

冷たい無機質な扉をノックした。

『どうぞ。』奥から彼の声が聞こえてきた。

中に入ると、白を基調にした明るいインテリアになっていた。

『流石、一級建築士のオフィスは違うね。』心の中で私は呟いた。

壁には彼が手掛けた高層マンションやオフィスビルの完成写真が綺麗なパネルで飾られていた。

夜に撮影した建物が多く、照明に照らされ幻想的かつ印象的な芸術作品の様でもあった。



彼に会ったのは8年ぶりだった。

ハウスメーカーの営業職として私は何度か彼に会っていた。

30歳で難関試験に合格した彼は斬新なアイデアを建築プランの中で披露していた。

施工主だけでなく、私もあっと驚かせる様な素晴らしい建築プランだった。


奇を衒うものではない。

不愉快な感情を誘うものでもない。

ピカソの絵の様に、特定の評論家だけが絶賛するものは、建築の世界には必要ない。

ピラミッドに様に、観光地にある歴史的な建造物は、日々の生活には全く必要ない。



建築とは、人がそれを利用し、人がそこで生活する事で、存在意義を得る。

建築家が自己満足で造った建物は、私達にとって全く価値の無いものである。



『介護の現場』で培った『生の情報』を柔軟な頭脳を持つ彼に聴いて欲しかった。


その意向を分かっていたのだろう、彼は静かに私の話を聞いていた。




kurumimochi2007 at 15:46│Comments(0)この記事をクリップ!

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